レスター・シティは何故優勝できたのか?
概要
レスター・シティFCのまさかの優勝で各種メディアからいろんな分析が出てるけど、キャッチーな部分に焦点を当てたものが多い中で、いまいち指摘されてない側面があると思ったのでいくつか補足的に書こうと思います。いろんな所で言われてる通り、レスターのやってるサッカーの質が高いのは勿論そうなんだけど、他にも様々な外部要因があったんじゃないかという話が主になると思います。特に、優勝候補の大本命と見なされていたチームが勝手に自滅していったのは大きい要素じゃないんでしょうか、とか、そういう感じで。
近年のイングランド・プレミアリーグの動向
僕が海外サッカーを見るようになったのってだいたい2009年とかその辺りだったと思うんですけど、だいたいマンチェスター・ユナイテッドかチェルシーが優勝してる記憶しかない。そういえば何か1,2回マンチェスター・シティも優勝してたと思う。あと有名どころだと、アーセナルは2003年に優勝したきり、リバプールは有名だけど実はリーグ優勝したことがない。ちなみに最後までレスターとの優勝争いのデッドヒートを繰り広げたトッテナム・ホットスパーも近年はだいたい5位ぐらいが定位置の印象のあるチームです。
2015−2016シーズンの下馬評
というわけで、このシーズンのプレミアリーグの優勝は、おおむねチェルシー一択だろうと考えられていました。理由は以下の通り。
- クラブのレジェンド監督であるモウリーニョ(元レアル・マドリー監督)がチェルシーに復帰して3シーズン目 (第二次モウリーニョ政権)
- 一つ前のシーズンでも、モウリーニョに率いられたチェルシーは、ほぼ「ライバル不在」とも言えるプレミアリーグを危うげ無く優勝
- 第一次モウリーニョ政権時代に唯一ガチでやり合えていたマンチェスター・ユナイテッドの名将サー・アレックス・ファーガソンは既に引退している上、その後の監督人選でミスを続けており、もはや全く怖くないブランド力だけのチームと成り下がっている
- アーセナルは基本的に勝負弱いしファン以外誰も優勝できるとは思ってない
- リバプール、トッテナムも優勝できる戦力ではない
- 唯一ライバルになりうるのはマンチェスター・シティだろうという風潮はあったが、シーズンごとに非常に波のあるチームという印象。どのシーズンもキープレイヤーが怪我で離脱しがちで、そういったメンバーがどれだけ試合でフルパフォーマンスを出せるか次第なので、あまり安定感のある印象はない
まさかのモウリーニョ解任
というわけで十中八九、モウリーニョが率いるチェルシーがプレミアリーグ連覇を掻っ攫うだろうと思われていたなかで、なんと予想外のシーズン開幕から大ズッコケ。更には結果が出ない中で選手との溝が深まり、とうとう年末にはレジェンドでありながら解任されるという展開。まあその辺の話は下記参照。
で、これらに補足するならば、モウリーニョはレアル・マドリー監督時代の晩年から何かおかしくなってる、ということが挙げられます。一応言っとくと、レアル・マドリーというのは、きらびやかな欧州リーグの中でも一番名誉のあるチームで、ライバルチームであるバルセロナは例外として、他のあらゆるチームは、レアル・マドリーに人材を引き抜かれるのはしょうがないし引き留めようもないばかりか、むしろ名誉あることだとすら考えられているような唯一無二のチームです。当然、そういったレアル・マドリーのようなチームを率いるのは比類ないプレッシャーがあるわけですが、そんな仲でバランスを失したのか、稀代の人心掌握のカリスマであるモウリーニョが、なんと選手からクーデターを起こされるということがレアル・マドリー時代から既にあった、というのは付記に値すると思います。
チェルシーが戦線離脱した中で
ということがありましてチェルシーが優勝戦線を離脱しわけですが、そんなことがあった年末から年明けにかけて、実際に優勝戦線の最前線を走っていたのが、レスターとトッテナム、そしてアーセナルでした。とは言え、レスターはこの時点では「降格候補筆頭だったチームの快進撃」といった程度のもので、何か一つ歯車が狂えば落ちてくるだろうという予想が大方、で、トッテナムにしても、優勝経験がない上、やはり5位からよくて3位のチームといった印象が強い中で、優勝の本命と見なされていたのはアーセナルだったように思います。トッテナムやレスターと比べても、アーセナルはタイトルに手が届きそうで届かないというのが10年近く続いたチームであり、久々の大型補強もハマりつつある中で、そろそろアーセナルの戴冠があってもよい頃だろう、というのが大方の見方でした。
だがしかし、これがアーセナルがアーセナルたる所以。永遠なる2番手。これだけ優勝するための条件が揃っても、今年のアーセナルは違うぞ!とはやはり思えないリーグ運びでちょくちょく勝ち点をこぼしていき、気付いたら今年も定位置である3位に収斂していきました。ちなみにアーセナルにはヴェンゲルという名物監督が長年居座っていて、かつてはシーズン無敗優勝なんかもしたりしましたが、今年はとうとう試合中にファンからヴェンゲルやめろコールが飛んだりと散々な内容。外野から見ていてもそうですが、やはりファンから見ても、アーセナルは今年優勝しなくていつするんだということで怒り心頭だったみたいですね。
というわけでアーセナルが3位に収斂していく中で、レスターとトッテナムの一騎打ちとなって、そしてどちらが優勝しても番狂わせという中で、より大番狂わせとなるレスターが優勝しました、ということになるでしょう。
あとマンチェスター・シティというチームが何となく4位にいるわけで、本来ならばチェルシーが離脱した中で優勝の本命として名乗り出てくるレベルのチームなんですが、シーズン途中で「今の監督はクビで来シーズンからはグアルディオラ新監督になります」というアナウンスが出たり*1で足並みも揃っておらず、また怪我人も相変わらず多くてグダグダでした。
まとめ
優勝の大本命だったチェルシーが突然自壊し、その次に優勝候補として躍り出るべきだったアーセナルやマンチェスター・シティが安定感のあるお家芸や意中の恋人に酔いしれてグダグダしている中で、勢いのあるレスターと若く生まれ変わったトッテナムが優勝争いに踏みとどまり、そしてレスターがそのままぶっちぎった、というのが2015-2016シーズンのプレミアリーグだったのではないでしょうか。
あと、全然関係ないですけど、昨日代々木公園のタイフェスティバルに行ったら、レスター・シティのスポンサーであるキングパワーのブースが出ていて、岡崎のパネルとかいっぱいありました。優勝おめでとうございます。
*1:このグアルディオラという監督は、今のバルセロナの栄華を築いた生けるレジェンドで、この人1人でサッカー戦術の歴史を50年は進めたと個人的には思っている監督ですが、マンチェスター・シティは長年この監督の招聘に全力を尽くしてきていて、何度フラレても猛アタックを続けた末にとうとう獲得。こういった経緯もあって嬉しくってシーズン途中でも発表しちゃったんでしょうね
手倉森U-23雑感
カンボジア戦雑感
近況
- ガンバも日本代表も弱いのでやる気が起きなかった。
- ようやくヨーロッパも開幕したのでまた何かしら書くと思う。
- いまはミランの開幕戦を見てます。
- 今年は、ブンデスはバイヤンとドルトムント、セリエはミランを追っていきたいけど、プレミアとリーガで見たいチームがない。ストークとセビージャでも見ようかな。以下はそれぞれ開幕戦を見た印象。
- バイヤン:今年も強い。ドウグラスコスタが思ってた以上にハマりそうで、リベリの代役になれるかも。ビダルについてはまだわからない。シュバこそ放出したもののペップ政権においてはそこまで重要なピースでも無かったし、全体としては戦力はアップかな。CLはどうだろう、やっぱバルサに勝てるかどうかなんだろうけど、それには何かしらのブレークスルーが必要なのは間違いない。そろそろペップマジック見せてくれよ。
- ドルトムント:こちらも攻撃面では強いドルが帰ってきた印象。ただ守壊気味なのでそこに手を入れないと首位は難しいかな。補強組がハマり出したら面白いとは思うけど現状は微妙。ディフェンスに強みのあるボランチなんかがいたらだいぶ安定感は出そうだけど...。ELは取れると思う。CL出場権も恐らくは大丈夫。
- ミラン:いまちょうど開幕戦見てるけど、PSMで何となく勝ててたのが良くなかったのか、全体的に狙いが見えない。メルカートが閉まるまでにズラタン級の怪物が1枚取れたら一気に化けそうな感じはあるけど。まあでもピッポ時代よりは強いと思う... とか書いてたらロドリゴエリーが退場からの失点なう、しかもその煽りを受けてホンディは交代。この若いCB陣が大人になってくるまでは我慢が続くのかも。ちょっと審判も厳しいけどね、でもCBはそこはクールじゃないと。
- セリエは例年ならユーヴェを追ってきたけど、もはやコンテ時代とは別のチームだからなあ。開幕戦も負けたみたいだし。アッレグリは素晴らしい監督だと思うけど、人望がないのか選手にはよく逃げられるよね...。
【2015-16 J1 2ndシーズン】ガンバ-ヴィッセル戦雑感
- 勝ったには勝ったけど、内容悪いなー。特に阿部ちゃんと晃太郎の調子が戻りきらないのがしんどい。去年頑張りすぎたんだよな…。その割にそこの補強無いし。
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今月のフットボール批評の、日本にかけているのは決定力ではなく「正しい守備の文化である」という特集が面白かったので、主に得点シーンの両チームの守備陣形に注目して見てたので、そういう話を今日はやりたい。この試合では、ガンバに2点、ヴィッセルに1点の得点シーンがあったわけだけど、やっぱり両者とも酷いなー。
- ガンバの1点目のシーン (上の動画の27秒ぐらいから)
というわけで、ヤットが上手い&GKの対応も謎というのは勿論のこと、守備的にも非常にマズかった得点シーンでした。あと1枚目からそうなんだけど、ヤットの後方で阿部ちゃんがどフリーなんだよな、使われなかったけど。特に酷いのは2枚目の意味もなくDFラインがズルズル下がっていったシーンなんだけど、本当に意図がわからない…。ヤットにしろ宇佐美にしろDFラインの裏使われるよりバイタルにスペース与えたほうが何でも出来るタイプなのに。 - 得点にはならなかった28分のシーン(上の動画の1分18秒ぐらいから)
ヴィッセルはDFラインとボランチの間は自由に使わせろという方針なんでしょうか?結果的に得意な角度ということもあって宇佐美がミドル打っちゃって外れたけど、ここは侵入されなくてむしろヴィッセルとしてはラッキーだったっぽい。 - ヴィッセルの得点シーンは割愛します。岩下の凡ミスなんで。また岩下か…。まあそこをちゃんとスカウティングしてきたという点はヴィッセルが一枚上手でした。強いて言うなら、すっかり中澤聡太枠に収まった感のあるウチのヤンキーをあまり虐めないでください。
- ガンバの2点目のシーン (上の動画の2分25秒ぐらいから)
というわけで、これも宇佐美が上手い以上にヴィッセルの謎守備に助けられた得点でした。仮に宇佐美があそこで決めきるシュートコントロール無くても、手前の倉田のところに出されたらどうせ1点だったし。 - ところで、いまの増川ってタッパがある以外に何か良いところあるの。クソ荒いしそれも自分のポジショニングが悪くてすぐサボるからアフター気味に突っ込んでいってるだけだし。まあ2点とも増川に取らせてもらった部分が少なくともあるんだけど、相馬より増川のほうがイエロー2枚で退場すべきだったと思うけど。
- 感想:失点シーンちゃんと見るようにしたら本当に酷かった。マークズラされたとかじゃなくて守備時の意味不明なポジショニングにオフェンス側はめちゃくちゃ助けられてる。去年のガンバだったり今年のレッズが強いのってその辺の守備の約束事がある程度ちゃんと出来るっていうのが大きいんじゃないのかな。多分当たり前のことなんだけど。
シンガポール戦雑感
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結果はアレだが内容は良いという、まあ煮え切らないチームにありがちなやつの極端バージョンっぽい。
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特に内容が良いなって思うのは、中央を固めてくる相手に対して、セオリー通りのサイド攻撃一辺倒になるのじゃなくて、スピードとスキルで中央割っていくシーンが何回かあったのがよかった。
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無論、セオリーどおりに、サイドから抉っていくような攻撃もあり、クロス主体になったり、あと後ろから一発で長いボールを入れるような攻撃も結構あったけど、ありがちな、無闇矢鱈な放り込みサッカーにはならず、ちゃんと繋げてたし。
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だから何が言いたいのかよくわからん早野さんが言うほどには悪くなかったとは思うんだよな コメントしづらい試合ではあるけど。
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川又って必要かな〜と思ってたけど、今日何かはいたら何か違ったかもですね。
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W杯予選〜W杯本戦の一連の流れを見てて毎回思うのは、日本は対アジアとW杯でチームとして求められることが180度違うっていうのはつらいですね。W杯本戦では、逆に日本が今日のシンガポールのような戦いをしないといけなくなるし。
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あれ、でもハリルホジッチってそういうのが得意っていう触れ込みでしたよね…。
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まあでも、ああいう時って監督は何したらいいんだろうな…。
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それが奏功したかどうかはともかく、今日のハリルホジッチ采配は面白かった。
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スタート4−2−3−1っぽくセットしたかと思うと、4−1−2−3っぽくなってる時間帯も多かったし。
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かと思えば、トップ下香川外してCF大迫をぶちこんだりしてね。早野は4−4−2ですねえとか言ってたけどあれは違う。コンテ(現イタリア代表監督)がシエナやユーヴェを率いていた頃の初期にやってた、4−2−4とかいう鬼フォーメーションだ。まさかあれを日本で見れるとは。
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しかもその後にはボランチ柴崎を抜いてMF原口元気を投入。4−1−5とかいう異様なフォーメーションとも捉えられそうな4−1−4−1だか4−1−3−2だかに移行。
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ただあの状況で、スペースで受けられる数少ない選手だった香川と、独力での打開力の高い宇佐美を抜くのが正解なのかどうか。確かに香川は味方に見つけてもらえないという状態だったし、宇佐美は明らかにフィジカルコンディションがめちゃくちゃ悪かったけど。ただなー、じゃあ他に誰変えるのってなったら微妙で、本田はどんどん中に入りすぎていたとはいえめちゃくちゃフィニッシュに絡みまくてったし、フィニッシュに関して言えば日本で岡崎より何かしてくれそうな感ある選手もいないし。
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ハリルホジッチの誤算
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その1:宇佐美のコンディションが思っていたより悪かった。宇佐美の特性として、多少の数的不利でもシュートまで持っていけるというのがある。それには2パターンあって、まずドリブルで仕掛けるモーションのままで抜ききらないままのシュート、もう一つがヴァイタルでフリーになればミドルを突き刺せること。特に後者なんかは、ガチガチに引いてくる相手には有効で、ペップバルサ時代にヴィジャがヴァイタルの一瞬で何回もチームを救ってたあのプレー。それが今回は全然決まらなかった。
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その2:周りが香川を使う意識が低かった。彼らしく上手く相手の隙間に入っているのにそこにパスが入らない。もしかすると遠藤ならちゃんとそこに入れられたのかも。でもこれは割とチームとして結構マズい状態だと思うなあ。香川の特性なんてもうあのメンバーならみんなほとんど知ってるだろうにそこに入れないってことは、なんか良くない流れみたいなのあるかもしれないよね。
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その3:両ウィンガーがスタートポジションから中にいすぎる。ホンディが全然サイドに張ってくれない。宇佐美も最初はちゃんとサイドに貼ってたけど、結局ホンディに釣られて中にワチャワチャしにいってしまう。
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その4:これが一番重要。これら誤算1〜3を放置してもどんどんフィニッシュまで行ってしまうので監督としては結構困ってしまう。しかもフィニッシュにまではちゃんと行くのに全然ゴールには入らない。冒頭でリンク貼った、僕こんなん初めてやし何言うたらわからんっていうのもまさにこの状況をしてっていうコメントなんじゃないかな。
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結論
日本代表には澤が必要
日本人はMFじゃなくてGK・CB・CFこそ海外に行ってほしい
【GK論】日本代表の正GKは、なぜ西川選手ではなく、川島選手なのか?chanchakorinmanyoji.wordpress.com
なるほどなとしか言いようが無い内容。要するに、西川くんはフィードがいくらレベル高くたって、他の基礎技術のところが世界水準と比べてガクッと下がってしまう、それに対して川島は確かにフィードは西川くん程じゃないし、プレー全体のムラがあったとしても、全体的に見たときにまだ西川くんよりも世界水準に近いんだな、っていうのが、練習動画を通じて明らかにされているのが上記の記事。自分がほぼフィールドプレイヤーとしての経験しかないから(低学年の時の練習試合とかじゃGKやらされたこともあったけど)、GKとしての「基礎技術」という面を測る物差しがほとんど無かったんだけど、そう言われると納得せざるをえない。
あと、
「確かに今現時点では西川選手も権田選手も川島選手よりレベルは落ちるかもしれないが、2人とも経験をもっと積めば、川島選手以上のプレーができるようになるはず。だから代表でも西川選手と権田選手に出場機会を与えるべきだ」…こういう意見もあるかと思います。
しかし西川選手は現在「28歳」。権田選手は現在「26歳」。決して「経験を積めば」などと言えるほど若い年齢ではありません。
っていうのは、本当にそうなんだよなー。西川くんも権田も別に若くないんだよ。あとここじゃ名前挙がってないけど東口も。 ただ川島がリールセという日本じゃ無名のベルギーのチームに移籍したのが27歳になる年のこと。そこからかなり鍛えられて今のレベルになったわけだし、しかもその日本じゃ頭一つ抜けてる川島の今のレベルっつったって、ベルギーの強豪クラブであるスタンダール・リエージュじゃ失格レベルなんだから、世界水準と日本のGKのレベル差は開くばかり。
ただ、日本においてだいたい同じような状況になってるのは、GKだけじゃなくて、CFとCBも同じだと思う。
CFについて見てみよう。たとえば、近年ショックだった覚えがあるのが、当時バリバリ日本代表のCFとして君臨していた前田遼一(当時30歳)が、英2部(当時)のウェストハムの入団テストを落ちたという話。2部ですよ2部。そりゃイングランドは、枠の問題とか色々ややこしいのは確かにあるんだけど、これは結構ショックだった。あとアジアカップ2011決勝でビューティフルゴールで優勝を手繰り寄せた李忠成も当時2部だったサウサンプトンでは控えだった。過去の話だけでなく、現状でいえば、ジーニアス柿谷曜一朗はスイスで十分にプレイしておらず、アギーレ以降代表にも呼ばれていない。同じく苦境にあるのが田中順也。結果は残しつつもなかなか先発を勝ち取ることが出来ていない。
また、試合機会を得ながらも、CFとしてではなくシャドーやウィングとして用いられているのが、ザルツブルグの南野拓実とBSCヤングボーイズの久保裕也。実はこの「日本で優秀だったCFが海外でサイドやトップ下にコンバートされてしまう問題」の元祖は、我らが柳沢敦の時代まで遡ることが出来る(もしかしたらもっと古い例があるかもしれないけど)。いろんな意味で汚名の多い彼だが、当時のJのレベルでは、高原直泰と並んで、頭一つどころか、二つ三つ飛び抜けてレベルが高かった。シュートだけは絶望的に下手だったが。ちなみに、余談も余談だが、柳沢敦という選手が後進に与えた影響というのは実は地味に偉大だったというのが、次の記事で明らかになっている。
「ヤナさん(柳沢)と一緒にプレーできた時間は財産。直接色々と聞くことは少なかったけど、練習などでプレーを見て盗んだ部分はたくさんある。ヤナさんを目標にやってきたし、それを生かしたいと思っている」(興梠)
「仙台に入って1年目に、スタッフから『ヤナさんの動きをよく見ておけ』って言われて、学んだのは確か。特にオフザボールのところで、いつでも相手の嫌なところに入ることを徹底していたし、それを練習からサボらなかった」(武藤)
今期のレッズが強いのは、興梠と武藤雄という2枚のプチ柳沢のためだと僕は考えている。ガンバファンとしては、昨期の天王山で興梠がいなくて本当に助かったし(昨期の時点で既にレッズは「興梠のチーム」だった)、それと引き換え、今期の1stシーズンの実質的な天王山だったであろう浦和ーガンバ戦で僕らが勝てなかったのは、こちらが怪我人だらけなのに対し、上述の2枚のプチ柳沢が元気ピンピンだったからという風に捉えている。 だいーぶ脇道に逸れてしまったが、柳沢敦という選手の汚名を雪ぎたいという思いは僕は常にあるのだ。そして、それぐらい偉大な選手である柳沢敦も、レッジーナ時代はCFとしての出場よりもウィンガーとしてのイメージが強い。そして、そのウィンガーや1.5〜2列目の選手だけ、何故か日本代表は供給過剰である。必然、ダブつきが生じて、システマティックな問題となってくる、というわけだ。
じゃあここで0トップ(いわゆる「偽の9番」を用いるシステム)を試してみてはどうだろう、ということも考えられた訳だが、残念ながら過去に日本代表においてそれが実践された形跡はない。南アW杯の時の日本代表をかなりディフェンシブな0トップシステムと捉えるような向きも無くは無いが、そこについてはまだ十分な検討がなされてきたとは言いがたい。ただ、あの時の本田を偽の9番として捉えたとして、では他に類例があるかと言うと、やはり思いつかない。ではなぜ日本代表で0トップ・システムが定着しないのか。それは、一つに、日本人は、少なくともフットボールに限定した際のインテリジェンスは高くはないから、戦術への理解と浸透が十分にはかられない恐れがあること。特に代表チームはクラブチームと違って練習できる時間はごく限定されていることも大きいだろう。そしてもう一つの理由が、今まで言ってきたことをすべて引っぺ返す一言なのだが、何だかんだでCFはいつも最低限1枚ぐらいは出てくるのである。ゴン中山・柳沢敦・高原直泰、そして再コンバートされブレイクしつつある岡崎慎司…。どれも世界に対して、ストロングポイントとまでは言えないにしろ、その平均点ぐらいのプレーはしてくれるCFだ。
ただ、CFにかろうじて1枚、ウィングと1.5〜2列目に似たタイプの選手が供給過剰に存在しているだけでは世界では勝てない。タイトルでも挙げた、GK・CB・CFという「屋台骨」が一本綺麗に通っていなければ勝ち目はないのである。これらのポジションは、野球でいうセンターライン(=キャッチャー・ピッチャー・二遊間・センター)にあたると考えて欲しい。そこの守備がグダグダなら勝ち切るチームには絶対になれないというのは想像に難くないだろう。特にCB・GKというのは、CFと違ってミスが失点に直結するきわめて重要なポジションだが、残念ながら現在の日本代表はここの人材に極めて困難を抱えている。GKの例は先ほど上げたが、CBに関して言えば、ドイツで出場機会をほぼ得られなかった槙野と、サウサンプトンで控え1番手に甘んじている吉田が先日のイラク戦では先発しているというレベルで、やれミランの10番だ、マンチェスター・ユナイテッドで7番を与えられそうになっただとか、10代でバイエルン・ミュンヘンのトップチームにいたとかいう華々しい話とは格が違うとしか言い様がない。
というわけで私が提案したいのは、日本にいる有望な25歳以下のGK・CBはどんどんヨーロッパに行きましょうということです。27歳になってからではもう間に合わない。本田みたいに2部からのスタートになったっていいじゃないですか。それに本田や吉田がJで圧倒的な選手だったかというとそういう訳でもなかったんだし。いま期待されてる日本のCBって誰だろう、植田直通とか昌子源とかかな。奇跡的に西野貴治がこのブログ見て決意してくれないかな〜とか、ガンバファン的には思ってたり。